分子整合栄養医学とは?
分子整合栄養医学という言葉はポーリング博士の造語です。
ORTH(オーソ) → 整合(ギリシャ語で “まっすぐ” “正しい” という意味)
OMOLECULAR(モレキュラー) → 分子(細胞)
NUTRITION(ニュートリション) → 栄養
MEDICINE(メディスン) → 医学
1968年、世界的学術誌『サイエンス』に「分子整合」という考え方を提唱、その意味を科学的に定義したポーリング博士の論文が掲載されました。
ポーリング博士の提唱された分子整合栄養医学とは、身体の中で本来、問題なく働いているはずの分子(栄養)がバランスを崩すことによって起きる状態が病気であり、栄養をしっかり補給することによって分子が正常バランスに戻れば、あるいは分子のバランスが保たれていれば、病態は自ずと回復する。という考え方です。「病気は身体に備わっている調整力によって治るのであり、医療や薬はその手助けにすぎない。治療のあり方を見直すべきだ。」と、当時の米医学界に訴え大論争になりました。従来の医学だけではなく栄養学の分野にも波紋を呼ぶことになったのが、栄養素摂取量の考え方でした。従来の栄養士さんや研究者のスタンスは「まともな食事をしていれば栄養は充分だ。」「栄養素を摂るにしたって少し摂れば充分効果が出る。」というものでしたし、古い栄養学に基づく画一的な栄養所要量の問題もありました。ポーリング博士の言う栄養素は、それぞれの人によって必要量が全く違ってきます。薬は大人3錠、子ども1錠の世界ですが、栄養素は決して画一的なものになりえないのです。なぜなら、年齢・性別・遺伝素因・生活環境によって、栄養状態は千差万別ですし、妊婦さん、成長期の子ども、スポーツマン、病態改善など目的と状態によって必要量は大きく異なります。消化吸収能力の違いにも大きな差があります。こうしてみましても栄養の必要量というのは非常に個人差が大きいということがわかります。今こそ少しずつ周知されてきた考え方ですが、従来の医学・栄養学を超えた新しい治療法として、分子整合栄養医学の恩恵を、どなたもが享受するにはまだ時間がかかるように思います。
ポーリング博士の科学的予見、慧眼への感動はもとより、故金子雅俊先生が終生、博士を敬愛して止まれなかったのは、従来の医学会や栄養学会からの、博士に対する迫害とも言えるような不当な攻撃に、飄々と屈することなく、固定概念や無知に立ち向かわれた博士の姿にありました。遺伝子発見を導き、分子結合を解明し、有機化学、量子力学、X線結晶学、老化制御とガン、果ては核実験反対の根拠を米政府に突き付け、人道問題にも情熱を傾けられた博士の信念と倫理観への尊敬でした。
私が分子栄養学を学び、栄養療法を実践して間もない頃、当時住んでいた岡山県北の田舎町に金子先生をお迎えして初めての講演会を開きました。休憩時間、ティーカップのコースターにビタミンCの化学式をシュシュッと書いて「ポーリングがね、『エンジオール基は世界を救う』って言ったのはね…」当時はポカーン状態で、先生の熱いご説明にわかったふりをして頷くのが精一杯でした。プレミアムがついたかもしれないコースターも、大事にし過ぎてどこにしまったかわからなくなりました。
ビタミンCと風邪、ビタミンCとガン、高濃度ビタミンC点滴によるエイズ治療や白血病進行抑制など、今ではその抗酸化力の威力を多くの方がご存知だと思います。水晶体や胃酸のC不足による白内障やピロリ菌感染も良く知られています。免疫能の向上、コラーゲンたん白(人体の組織を結合させる作用を持つ大変重要な物質で、血管、皮膚、筋肉、骨を丈夫にする働きがある)の育成にも大量のCが消費されます。哺乳類は自前でビタミンCを作れるのですが、人間にはそれが出来ません。不思議なことですが、動物には粥状動脈硬化は起きないのに、人間には起きます。Cが豊富になければ産生できないコラーゲンが、動物の動脈には蓄えられて動脈が強化されるそうです。体内でC産生の出来ない人類の動脈は弱いということになります。もし、人が充分なCを摂取していなければ、動脈に病変が生じ、心臓疾患は悪化の一途をたどると教えて頂きました。
「エンジオール基(ビタミンC)は世界を救う」
上記が私が現段階でご紹介できる僅かなことです。