愛着障害について
愛着障害のトピックに入る前に「愛」についての定義を2つご紹介します。
✧「愛には恐れがありません。全き愛は恐れを締め出します。」
これは新約聖書ヨハネ第1の手紙4章18節の言葉です。
✧「愛は薬に勝る」
これは選択理論心理学を学び始めた頃、柿谷正期先生から聞いた言葉です。
愛着理論の提唱者ジョン・ボウルビィからの引用だったと思います。 人は水や食べ物に飢えたら生きることが出来ません。
同じくらい愛に飢えたら生きる意味を見失ってしまいます。
今、世界情勢も不穏で「恐れのない愛」などほとんど見当たりません。
残念ながら現代は、多くの人と平和で愛に満ちた良好な関係を築くことがとても難しい時代ですね。
でも、実は『恐れのない愛』はあります。
そのことは今後、ブログ「聖書について」でお話したいと思います。
では、家族とは何でしょう?
Wikipediaには次のように説明されています。
家族(かぞく、family、Familie、famille)とは、 夫婦や親子という関係を中心とする近親者によって構成され、相互の感情的きずなに基づいて日常生活を共同に営む最も小さな共同体である。
感情的きずなが希薄…
親密になりたいのになれない…相手の顔色を伺い、先読みし、常に不安がつきまとう、そんな「恐れ」を抱えて生きづらいと感じている方、いらっしゃいませんか?
正に私自身がそうだったからと思いますが、「愛着障害」という言葉に出会い、情報に触れ、腑に落ちることが幾つもありました。
何となく生きづらさを抱えている方、近しい人間関係(夫婦、親子)の悩みを抱えている方に「愛着障害」について少しご紹介します。
私と家族の関係回復の一助となった視点です。
以下の紹介記事は、精神科医岡田尊司先生著書よりの引用です。 (著書名は末尾にまとめて記載しています。)
【人間が幸福に生きていく上で、もっとも大切なもの、それは安定した愛着である。愛着とは、人と人との絆を結ぶ能力であり、人格のもっとも土台の部分を形作っている。人はそれぞれ特有の愛着スタイル(安定型、回避型、不安型、恐れ・回避型)を持っているが、安定した愛着スタイルを持つことが出来た人は、対人関係においても、仕事においても、高い適応力を示す。人とうまくやっていくだけでなく、深い信頼関係を築き、それを長年にわたって維持していくことで、大きな人生の果実を手に入れやすい。どんな相手に対してもきちんと自分を主張し、同時に不要な衝突や孤立を避けることが出来る。困ったときは助けを求め、自分の身を上手に守ることで、ストレスからうつになることも少ない。人に受け入れられ、人を受け入れることで、成功のチャンスをつかみ、それを発展させやすい。】
この文章を初めて目にした時、打ちのめされました。
「私は一個人としても親としても0点だなあ」と思いました。
【愛着の問題は…今日、社会問題となっている様々な困難や障害に関わっていることが明らかとなってきた。たとえば、うつや不安障害、アルコールや薬物、ギャンブルなどの依存症、境界性パーソナリティ障害や過食症といった現代社会を特徴づける精神的なトラブルの多くにおいて、その要因やリスクファクターになっているばかりか、離婚や家庭の崩壊、虐待やネグレクト、結婚や子どもを持つことの回避、社会に出ることへの拒否、非行や犯罪といった様々な問題の背景の重要なファクターとしても、クローズアップされているのである。さらに、昨今、「発達障害」ということが盛んに言われ、それが子どもだけでなく、大人にも少なくないことが知られるようになっているが、この発達の問題の背景には、実は、かなりの割合で愛着の問題が関係しているのである。実際、愛着障害が、発達障害として診断されているケースも多い。】
さらにガーン!でした。
からだに関しては「貧血は万病の元」だと知っていましたが、「機能不全家族の元は愛着障害」だったとは。
※「金子雅俊先生へのオマージュ」で❝貧血❞について触れていますので是非お読みください。
金子雅俊先生にささげるオマージュ
愛着に関しては生物学的メカニズムからも解明されています。
超簡単に言いますと、愛着ホルモンと呼ばれるオキシトシンには、不安を緩和する効果があり、これまで心理学的に、基本的安心感と呼ばれたものは、実はその人の*オキシトシン・バソプレシンシステムの特性を映し出したものだと言えるのです。
その人の幼児期の体験が、その人のオキシトシン・レベルや受容体の活性、分布に反映されているとも言えます。
*オキシトシンと共に下垂体後葉ホルモンであるバソプレシンは、元々は腎臓の血管を収縮させる抗利尿ホルモンとして知られていましたが、愛着や社会性に関連した作用を持つことが発見されたのは、比較的最近のことです。
遺伝、生育歴に起因するとなれば「愛着障害」の壁は越えられず、「愛着の傷」は癒やされないものなのでしょうか?
前述のとおり、愛着システムは、生物学的基盤を持ちながら、同時に世代から世代に継承されることで維持されていく側面があります。
愛着崩壊は家族崩壊、ひいては社会崩壊につながるとも言えるわけです。
愛着障害克服のキーワードとして「安全基地」という言葉があります。
子どもの安全基地になるべき母親に問題がある場合、父親、祖父母、叔父叔母、カウンセラーなどが、代わりに「安全基地」になることは可能です。
実はこの母親も愛着障害を抱えているケースが多く、母親にも助けが必要です。
「安全基地」…文字どおり、安全で安心感を感じる人物の存在、関わり、場所です。
ありのままでいられる。
自分の本音を正直に話しても裁かれない。
安全基地の中核をなすものは「信頼」であると、私は思います。
選択理論心理学によれば、基本的欲求の「愛と所属」の欲求が満たされている関係だと言えます。
体の不調から生じる不安にも分子栄養学の観点からアドバイスが可能です。
私の体験
選択理論心理学
分子栄養学
トータルで皆様の「安全基地」になりたいと思います。
岡田尊司先生は安全基地になるための条件を四つ挙げておられます。
ポイントを要約してご紹介します。
①安全を脅かさない
助けを必要とするときに、そばにおいて守るというだけでなく、よけいなことをして安全感や安心感を脅かさないことが大事である。
相手が嫌がることをしつこく聞く、指図する、非難や攻撃は極力避ける。
本人が本音や悪いことも言ってくれるかどうかが鍵である。
本人の求めているものを無視して、こちらの期待や基準、方法を押し付けるのも、安全感を脅かす対応である。
②共感的応答
文化や社会の違いを超えて幼い子どもが安定した愛着を示す母親に共通していることがある。
いつもわが子のことを見守り、何かあればすぐに反応してわが子をその腕に抱こうとする、つまり、求めたら、すぐに応えるという応答性が最も重要な共通点であることがわかっている。
共感的応答というのは、子どもの求めているものを感じ取って、それに応えるということである。
そのためには、子どもが感じていることを一緒に感じる必要がある。
子どもがなぜ泣いているのか。
子どもの意図を感じ取る感受性、メンタリゼーション(相手の気持ちを相手の立場で理解する能力)と呼ばれる共感的応答は、子どもの方にすべての関心を向け、細心の注意を払って試行錯誤する中で身についていく、熱意と努力の賜物である。
手抜きして、適当に済ませられるものではない。
しかし、親に心身の不調があると共感的応答は低下する。
親にも弱さを開示できる安全基地が必要である。
③秩序性
揺るぎない秩序が安全基地となる。
いつもは黙ってやさしく見守っているが、危険なことやまずいことをしようととしたり、してしまった場合には、すかさず止めたり、危ないと叫ぶ。
生活の秩序を維持し、外敵や危険から身を守り、そうした安定した生活を過ごす中で、子どもも安全に快適に生きる術を学んでいく。
生活の秩序を保つためには、安全基地となる存在自体が安定している、少々のことに動揺しない、コロコロ態度を変えない、言うことや気分に一貫性がある、「大丈夫だよ」というメッセージが伝わっていることが重要である。
見通しが立たず、いつ何が起きるかわからない環境は、子どもの存在と愛着を最も不安定で無秩序なものにしてしまう。
しかし、安全基地は何でも許容し甘やかすことではない。
安全基地とは、本人を本来の意味で守る存在である。
目先のことではなく、究極的な意味において、本人に責任を取らせることが、本人を守ることであれば、厳しい措置であってもためらってはならない。
④振り返る力と相手の立場で考える力
愛着という仕組みは、小難しい理屈ではなく、本来哺乳動物に共有される子どもを守り、育てるための仕組みである。
動物は短期間に自立するが、人は非常に長い期間、親子関係を維持するという点で特別である。
脳の成熟には時間がかかることと、言語を介した高度なコミュニケーションや、反省的思考と関係している。
自分を振り返る力と相手の気持ちを汲み取る力には共通点がある。
それは自分目線を離れて客観的に物事を見ることができるということだ。
自分の視点に固執せず、自分を振り返ったり、相手の気持ちになって考えることが出来るのは、安定した愛着を持つ人の共通項である。
私と家族は自己受容も、相手を受容することも、なかなか険しい道のりでしたが、ようやくこれまでを振り返る余裕や、感情的にならずに分かち合うことも出来るようになりました。
少しずつ回復のプロセスを歩んできた経験を軸に、分子栄養学や選択理論心理学のアプローチが加わると、ひょっとしたら皆様の安全基地になれるかもしれない。
そう願うまでになりました。
聖書にも次のような言葉があるのです。
「ですから、あなたは立ち直ったら、兄弟たちを力づけてやりなさい。」
新約聖書ルカ福音書22章32節
兄弟たちというのは、血肉の関係だけではありません。
同じ仲間という意味があります。
カウンセリングハウス未来にお越し頂けることを、心からお待ちしています。